貴方はどんな風に暮らしたいのか?【2014年8月号掲載】のあとがき

このコラムを読み返して、考えました。

「何でこんなテーマでコラムを書いたんだっけ?」

コラムの冒頭に書いた様に、一人の読者さんからDMを受け取ったから、とも言えます。しかし、それはただの「きっかけ」で、根底にあった思いは何だったっけ? そんな事を考えました。そして何となく思い出される節がありました。

『韓国という国で韓国人の施主さんを相手に住宅設計の仕事をしながら感じたモヤモヤとした気持ちを、こういう形でも表現したかったんだ』

 

殆どのクライアントの皆さんは、住宅の外装・内装・インテリア・家具のイメージや平面図など、雑誌メディアやオンラインで見つけた資料のスクラップを溜め込んで「充分に準備できた」と思い込みます。そして、その状態で設計を依頼しようとします。

「家の形はバウハウス・スタイルで平面は回遊同線、コンクリート造は健康に悪いって言う人が多いから木造にしたいんですけど…」

…こんな事を言いながら、二十枚を超えるイメージをサンプルで見せて来ます。けれど十中八九の割合で、それらは『実現不可能な要望』でした。まるで違う気候と敷地条件に建てられた『格好のいい家』そんなもの「絵に描いた餅」です。窓の配置と大きさ、屋根の形などは全て陽当たりの環境と密接な関係があります。そんな事を説明するとクライアントさんから返ってくる答えはいつも一緒でした。

「そんな事考えてもみなかった」

クライアントに接しながら感じる違和感(もしくは疑問)は積み重なって行きました。「本当は何を悩まなければならないかを知らない」「自分に必要なものも知らない」…そんな思いが募りました。そして思いました。「ちょっとは自分で考えて下さい」と。

 

最後に一言。

『人気商品』『おすすめ』『インスタ映え』そんな単語、糞食らえです。そんなもの『他人頼み』『他力本願』『見栄え自慢』を格好いい同義語と思って大丈夫です。